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『へんしん不要』刊行となりました

 こんばんは、調子はどうですか。
 おかげさまで、きょう10月22日に、初めての単著『へんしん不要』がタバブックスさんより刊行されました。タバブックスさんのwebサイトで2年ほど連載していたものに、加筆や修正、書き下ろしなどを加えたものです。

 筆も遅く、心身の調子も乗りこなせずで、形になるまでだいぶ時間をかけてしまった本ですが、単行本用の初稿を出してからはあっという間で、正直まだ実感が湧いていません。
 そのくせ不安や緊張は通常倍率で(むしろ増しで)感じているので、ここのところは全然落ち着かず、特典を用意したり、しつこくツイッターに告知を流したり、森の整備に勤しんだり、「あー不安だ、どうしよう」「もう本当に無理」などとぼやきながら家の中をうろうろしまくるなどしていました。

 『へんしん不要』がどういう本かと聞かれると、少し悩みます。ジャンル的にはエッセイなのでしょうか、日記のような宛先のない手紙のような、よく分からないものです。
 自分はなんというか心身の防御力が低く、ちょっとしたことでバランスを崩すし、季節が変わるごとに何かしらの不調に襲われているという感じで、日々のことを書いたところで全然盛り上がったりはしないのですが、でもまあ心身虚弱でもそれなりにやっているよ、ということを、この2年ほどの間書き続けていました。

 連載を書籍化するにあたり、だいぶ削ったり付け足したりの作業をしました(追伸も一本書きました)が、それでも基本的には、当時思ったことや感じたことを書いているはず……。読み返すと「今の自分はこうは思わないな」と感じることなども結構ありますし、本の中でも言っていることが変わったりもしていますが、ゆるゆるとした変化も含めて読んでいただけたらなと思います。

 ただ私としては、自分が少しずつでも変わっていけたこと、成長とも治癒とも言い難い、でも確かに違うどこかへ足を進められたということを、とても嬉しく感じています。

 

 この本がどのようにして読まれるか、書いた私には分かりません。「こんなふうに読んでほしい」「こんなことを思ってほしい」と言うのも違うだろうし、読んでくれた人の何かを大きく変えるような本でもないと思います。
ただ、なんとなくこの本を必要としてくれる人は、疲れていたり、「どうにかやっていく」ことに力をたくさん使わないといけなかったりする人ではないかと想像しています。
 

 この本があなたを助けられるものだとは思いません。ただ、本を読むという行為はやや「時間かせぎ」に似ているというか、たとえば今晩もう消えてしまいたくてたまらない、というときなどに、目で文字を追いかけるだけでも、ほんの少し気がそらせるような、そんな感じがします(私がいつもそうしているというだけなのですが)。そうやって時間をかせいで、どうにか朝を迎えてくれたら、もう内容とか感想とかはどうでもいいのです(いや、どうでもよくはなく、とてもありがたいものなのですが)。また、暇というのも時折心の健康によくなかったりするので、暇つぶしに使ってもらえるのも大歓迎です。

 どんな形であれ、本を手にとってもらえるのはとても嬉しいことです。本屋さんやネットの通販など、いろいろな方法がありますが、どうかよき場所、よきタイミングで出会っていただければと思います。

 連日そわそわしていたせいで、若干体力が尽きかけており、まとまりのない文章になってしまいました……。
そして、ここからはお礼です。

 

 版元・タバブックスの宮川さんには、この本のことに限らず何から何までお世話になりました。刊行にあたって、宮川さんがサイトに文章を書いてくださったのですが、大学生のころからだからもう4、5年のお付き合いになるんですね……! これまで山ほどおかけした迷惑が走馬灯のように……。あといつも食べ物をもらっています……。よく笑いよく飲む宮川さん、連載中も適度な距離感で励ましていただき、本当にありがとうございました。こうして一冊の本になるのも、宮川さんのおかげです。

 

 そして、本の装画はのむらあいさん。のむらさんには、web連載時のバナーイラストからお世話になっています。本のために新しく描いていただいたイラストが本当にすばらしく、調子に乗っていろいろ特典などに使わせていただいてしまいました(勝手ながら、ラフをいただいたときからスマホの待ち受けにもしていました……)。すっと水のように浸みこんでくる絵で、しかも眠っているおさるちゃんをはじめ、文章の中に出てくるモチーフを細やかに拾い上げてくださり、ぎゅっと抱きしめたくなるような、枕元に置いておきたくなるような、お守りとしてずっと持っておきたくなるような、そんな本になりました。

 装丁は、タバブックスの3/4シリーズを通して担当されている、惣田紗希さん。シリーズ第1作の『あたらしい無職』(丹野未雪さん)を手に取ったときから、いつか自分も何かをデザインしていただきたい……!と思っていたので、とても嬉しかったです。明け方の青と薄紫の光が差し込む本。表面にマットPPの加工がされているので、枕元に置いておいてもくしゃくしゃにならないし、飲み物をこぼしても安心! 「心身が疲れていると明朝体が読めなくなりがちなので、本文はゴシック体がいいです」というわがまままで聞いていただき……。本当にありがとうございました。

 

 それに、一冊の本にするまでの過程で関わってくださったデザイナーさん、校正さん、DTPオペレーターさん、印刷・製本所のみなさん、そしてその本を適切なところへ届けてくださる取次や書店のみなさん、告知などにご協力くださったみなさん。直接お顔を拝見してお礼を言うことが叶わず心苦しいですが、本当にありがとうございます。

 そして、さっそく読んでくださったみなさま、本当に本当にありがとうございます。感想など一つ一つ拝見させていただいています! 不安と緊張で倒れずにいられるのも、みなさんのおかげです……。
 秋も深まり、世はめちゃくちゃで、息をするのも苦しい日が続きますが、どうかくれぐれもご自愛ください。
今いるそこが、少しでも居心地のいい場所でありますように。

2020年10月22日 餅井アンナ

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